碧緑の鳥

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碧緑の鳥

帝都で起きた小さな地震。ほんの少し積み上げた本が揺れるくらいの、何てことの無い地震のはずだった。
運の悪いことに国立図書館で書籍の整理をしていた私は脚立を踏み外し頭を強かに打ち付けてしまう。
目が覚めた私が失っていたのは女学校を出てから記憶、全てだった。

女学校を出てから出会ったという下宿先の皆と記憶を辿るも核心的なものは何一つ思い出せない。
そんな時に皆から提案されたのは誰か一人を選らんで出かけてはどうか、そんな提案だった。
朱鷺宮さんに助けを求めるも女の勘に身を任せろ、という。
選べない私に皆が詰め寄るも、パニックに陥った私が選らんだのは……。



XX章 杙梛

「それで困って俺を選んだってわけだ」
私が身をすくめて座り込んでいるのは、街角の小間物屋、杙梛さんのお店だ。
「悪質な冗談を言う男だって分かっていて指名するとは……俺が思っていた以上に豪気なお嬢さんだ」
私自身も一人でこの怪しげな店に来ることになるとは思ってもいなかった。
「混乱してしまったんです……あんな風に……男性に囲まれて詰め寄らるっていうのは体験したことが無くて……」
記憶を失う前は交流のあった方々だとは言われても私からしてみたら昨日あったばかりの他人。
生まれてこの方男性とお付き合いをするどころか、家族以外の男性と出会うことすら覚束ない私にとって見覚えのない男性に囲まれて詰め寄られるという事態は恐怖しか感じ得なかった。
「他の男性の名前をあげようにもじいやとヒタキくらいしか私の周りにはいなくて……咄嗟に杙梛さんのお名前を出してしまったんです」
一度巡回で聞いただけの名がすっと口から流れ出てしまったのだ。
(自分でも不思議だわ……)
「巻き込んでしまって申し訳ありません」
杙梛さんからすれば本当に降って湧いた災難だろうが、一度口から出した言葉は中々訂正できずここに来てしまった。
「お嬢さんが駆け込んできた時には何事かと思ったぜ。まぁ、美人が駆け込むのは大歓迎だけどな。……今度駆け込む時には深夜にこいよ?もっと歓迎するぜ?」
「きゅ、きゅ〜」
相槌を打つようにぺりが可愛く鳴いた。
杙梛さんの軽口を無視しながら、可愛らしい鳴き声に目を向けるとクリクリとした一対の瞳と目があった。
ふさふさのしっぽに思わず唇が緩む。
ぺりはちょこちょこと小さな足を小刻みに動かし近づいてきたと思うとトントンとリズミカルに私の膝の上に登った。
すりすりと胸元に押し付けられる小さな頭をゆるゆると撫でると掌にじんわりと暖かな温度が広がる。
春先だというのに知らず識らずのうちに緊張で手が冷え切っていたようだった。

「今度からは番犬は置いて一人で来いよ、うちにはペリだけで十分だぜ」
咄嗟に杙梛さんの名前を上げた私を皆は必死で止めた。
そんな皆を振り切って、ここまで来たつもりだったが行き先が明確な私を、市中の裏道まで把握している皆が待ち伏せするのは容易なことだったようだ。
店に着いた頃には尾崎さん達が仁王立ちで待ち構えていた光景は、男性が苦手な私にとっては何とも忘れたい光景だ。
焦燥感が漂っている皆の圧が凄かった。

「……まともな説明もできない私を庇ってくださって、ありがとうございました」
店先で騒ぐ私たちに気付き、店外にゆるりと出てきた杙梛さんの対応は目を見張るものだった。
碌に説明のできていない私と杙梛さんには碌に説明をする気のない皆。
それでも漏れ聞こえた話と、私たちの顔を見ただけで状況を把握したのかすぐさま私の味方についてくれた。
状況把握速度が半端じゃない。
流石は商売人というべきか、手八丁口八丁、最後は皆を納得させ追い払ってくれたのだ。

「礼なら口づけで構わないぜ」
「くっくくくちづけ、だなんて!!破廉恥ですよ!!冗談にしては本当に悪質です!!」
ニヤニヤ笑いながら煙管で己の唇を突付く彼を見ながら、心の中で己の軽率さを後悔しないわけもないけれど。
朱鷺宮さんのいう女の勘というやつが、自分に備わっていなかったらどうしたらよいのだろう。
「ははは、反応がいいな、数年前のお姫さん、って感じで新鮮なこった」
杙梛さんはゆったりと煙管の煙を吐き出したのちに、口を開いた。
「数年前にも私に同じような御冗談を?」
「そうそう、それで似たように慌てふためいてて可愛らしいのなんの」
「かわいらしいだなんて、そんな」
聞き慣れない褒め言葉に狼狽えてしまう。ほんのりと嬉しい気持ちを感じながらも。
「いいか、お姫さんがさっき見たいな時化た面してるなんて勿体ねぇ、折角可愛い顔してんるんだ、ぺりでも撫でながら笑ってろよ」
「きゅ〜♪」
「……ありがとうございます」
男性に慣れていない自分が少し過敏だったのかもしれない。
荒唐無稽な話をして、この人なりに私自身が気づいていなかった緊張を解してくれようとしたのかもしれない。
少し軽薄なところが有りそうで警戒してしまったけれど、優しく気遣いのできる年上の男性なのかもしれない。
(きっと、何だかんだ言っていい人なんだわ……!)
「何とお礼を言っていいか……私のできることであれば何でもしますね」

「”何でも”?」

急に真剣みを帯びた声色に体が固まる。
「男に何でもなんて言っちゃぁ駄目だぜ、お姫さん」
目を瞬かせている間に、膝から温度が消える。
ほんの数歩で距離を縮めた杙梛さんが私の膝の上にいたぺリを抱き上げたのだ。
「特に俺みたいな、悪〜い大人の前じゃな」
身をかがめるように覗き込まれると思いのほか顔が近く息を飲んだ。
瞳に真っ直ぐと見つめられるとまるで蛇に睨まれた蛙のように体が動かない。
「ぜ、前言撤回します……」
必死に紡いだ言葉は思いのほか震えていた。
「まぁ、前言撤回してもお姫さんに”やってもらうこと”はやってもらうけどな」
「え、ど、どういうことでしょうか?」
抱き上げたペリを床に降ろすと店の奥へとくいと顎をしゃくった。
杙梛さんの指示を読み取ったのかペリはたたたっと走り去った。
少し距離が離れた杙梛さんを必死に押しのけると、立ち上がりその背を追おうと一歩を踏み出す。
しかし、その行く手を阻むように杙梛さんが立ち塞がった。

「世間知らずのお姫さんに教えといてやる。商売人ってのはただじゃあ動かねぇ」
「そ、そんな」
「言葉じゃなくてお礼の気持ちは態度で示して欲しいもんだぜ」
「えっと、それでは、後日お礼の品をもってこちらに伺います。杙梛さんは甘いものはお好きかしら?」
震える声を必死に押し留め、笑顔を貼り付けて尋ねる。
「甘いもんねぇ、好きだぜ、あま〜い声した女は最高にいい。お姫さんがリボン巻いてきてくれるっていうなら大歓迎だ」
「ななななな……!!」
「お姫さんのおかげで朝から店仕舞いだ。お姫さんは忘れてるかもしれないがフクロウってのは国の機関だ。上に睨まれちゃあこの帝都じゃあまともに仕事ができなくなるかもしれねぇなぁ」
あまりの内容に、声も出ぜず小さく息をのむ。
店を畳まなければいけない、そんなリスクをを負ってまで私を助けてくれたというのだろうか。
そんな事態に他人を巻き込むつもりなんてなかった。
何の気なしに、名前を上げてしまった自分自身が情けなくて涙が出そうになる。
「……す、すみませんでした、私そんな大事になるとは思っていなくて」
「何、代わりに礼は遠慮なく貰うから問題ない。簡単な話だ、その躰で支払いな」
「わ、私、そう、いうことは絶対に無理です……!代わりにお金をお渡ししたいのはやまやまなのですが久世家は華族といっても今は自由になるものはあまり……」
「確かに金に魅力を感じない商売人はいねぇが……俺は美人にも目が無いんだな、これが」
彼が一歩進めば私も一歩下がる。
然程広くない店内でそんな攻防をしていれば直ぐに踵が、背が壁へと突き当たった。
(もう、下がれない……!)
「なあに、痛いことなんて何一つねぇよ、ちょこっと借りを体で返して貰う、それだけだぜ」
煙管から唇を離した杙梛さんは気持ち悪いほどの笑みを浮かべながら、私の上着への手をかけた。
自分でも分かる程、生唾を飲み込んだ喉がごくりと鳴った。



鏡を見ずとも分かる。
今の私の顔が赤いはずだ。火照った頬が、耳が熱い。
彼を勘違いしていた自分自身に、彼のやること全てに羞恥を覚える。
「ほら、手を挙げろよ」
観念した私は言われるがままに両腕を上げる。
私の髪を軽く肩から払った大きな掌がゆっくりと背中を辿る。
鼻先に触れる黒衣からは嗅ぎ慣れない煙草の匂いがふわりと香った。
(お父様もじいやも纏わない香りだわ……)
急に掌の動きが止まったかと思えば腰回りを弄られ、くすぐったさに漏れそうになる声をぐっと押しとどめた。
合唱部で鍛えた腹筋がこんなところで活躍するとは思ってもみなかった。
「……よし、力抜いていいぞ……次はそのままスカートの裾を持ち上げて」
「……」
「ずっとこのままでいるつもりか?俺はそれでもいいけどな。前だけでいい」
「……」
無言でスカートの裾をそっと持ち上げる。
たっぷりとしたフリルがズシリと重く感じるのは本当にその重みがあるからなのか、気持ちのせいなのかは分からない。
「よーし、いい子だ。……んっ……そう、怯えんなよ。俺は上手いから痛くしねぇよ」
「……杙梛さんがこんなに慣れてるとは知りませんでした」
迷うことなく、動き続けるその手に翻弄されっぱなしだ。
「もてる男ってのは何でもそつ無くこなすもんだぜ?惚れ直すだろ?」
「も、元々惚れていないので惚れ直すこともありませんっ」
「へー、へー冷てぇの」
「は、早く終わらせてください……」
「そう急かすなよ、これで終いだ」
そういう杙梛さんの手には、小さな楔が握りこまれていた。
とても、とても小さな銀色の待ち針が。

「刺さりそうで怖いし、杙梛さんが近くて恥ずかしいんです!勘弁してください!」
「大丈夫だって言ってるだろ?ほら、真っ直ぐ前を見ろ。動いた方が危ないぞ」

終いだ、という言葉にすっと針の刺された裾を降ろすと、胸を撫で下ろした。
後は針に触れないようにこのドレスを脱ぐだけだ。
あの後、奥の座敷に連れ込まれた私は大人の階段を登った……わけもなく。
杙梛さんに着せ替え人形にされて辟易していた。
大量に買い付けたという異国のドレスは異国の女性サイズに作られているため、日本の女性には些かサイズが合わないことが常だという。
女性としては平均的な身長の私にドレスを着せると、ドレスの袖から始まり、腰、裾を直すため待ち針を打ち込んで回った。
自身があまり裁縫に自信がなければ嫉妬してしまいそうだ。
男性が裁縫をするとは驚きだったが、ここ数年で変わった世間の常識では性別を基準に何かを考えることは愚行なのかもしれない。
それとも自由な基質の彼がそういったことの拘らないだけなのか。

いつ針で刺されるのか、と固まリ続けていると本当にマネキンになってしまいそうだったがそれでも自分で裁縫が下手ではない、と断言する杙梛さんの言葉に嘘はなかった。
あまりの手際の良さにほんの少しだけ周りを見る余裕が生まれる。
人の心理というのは複雑怪奇なもので、一つの心配事が片付くと直ぐに次の悩みが湧いてでてくる。
私の心に恐怖の次に湧き出ててきたのが羞恥だった。
体に触れる手、頬に触れる変わった素材の民族衣装、鼻腔をかすめるタバコの薫り、触れそうで触れない吐息。
動けないと思うと全てに過敏に反応してしまう。
敏いこの人は私の心打ちをどれだけ気づいているのだろう。
気づいていても言わないだけなのか、将又仕事に夢中で気づいていないのか。
(とてもじゃないけど、怖くて聞けないわ……)
気付いていたぞ、とでも言われたらきっと私は羞恥で死んでしまうだろう。

「こ、これで、終わりですよね?もう、脱いでも大丈夫ですか?」
「お〜、いいぞ〜。気を付けて脱げよ。次はそこの箱に入ってる緑のドレスな」
「これで終わりっていったじゃないですか!!杙梛さんの嘘つき!!」
「嘘じゃねぇよ、さっきのドレスの裾直し用の当たりはあれで終わりっていっただけだろ〜」
無視して元の服へと着替えてしまいところだが、一枚目のドレスに腕を通した時点で、速やかに元の服が片付けられているのだから質が悪い。
流石に針付きの高そうなドレスを着たまま外を闊歩する度胸はない。
「後、一枚だから、頼むぜ、姫さん」
”お願い”とばかりに両手をすり合わせる杙梛さんをたっぷりと睨め付け、部屋から追い出すと、最後の箱へと手を伸ばした。

最後の箱は少し古ぼけた茶色の箱で、さっきまで見かけていた真っ白な箱とはほんの少しだけ毛色が違った。
今度も見たことの無い異国のドレスと同じものだろうか。
色も形も統一性はなくたっぷりとしたフリル付のドレスから少し薄手のサマードレス、少し露出が多いと感じるものもあったが最近はこれが普通なのだという。
若干怪しんではみたものの、自室のクローゼットに入っていた紅いドレスを考えると、その言葉は真実なのかもしれない。
手にとった箱の蓋を開けると思わず声が漏れた。

「これは……」



「お、いいじゃねぇか」
声を掛けられたかと思えば、是の返事をする前に襖がスパンと開いた。
「ま、まだ開けていいとはいっていませんよ!」
「大体声かけた時の反応で分かるって。どうせ照れて自分から出てきちゃくれないだろ」
「うっ……」
否定はできないその言葉に口ごもる。
確かにドレスを着た後、それを見せる決心だけが付いていなかった。
「……それでも、まだ着替えていたりしたらどうするつもりですか!」
「俺には何の問題もないけどな。お姫さんに一等似合うと思ってはいたんだが……これは予想以上だぜ」
「でも、このドレス、足が……出すぎます……」
先ほどまでの英吉利風のドレスはどれも裾が長くて脚が出ることはなかったが最後のこの服は違う。
裾は足首の少し上までと短くは無いのだが、長いスリットが太ももまで入っている。
更にいえば、緑のつるりとした生地がぴったりと躰に沿い、身体のラインを顕著に表していた。
俯き、必死に太ももを隠していたがその両の手のひらを取られる。
「隠すなよ、勿体ねぇなぁ」
そんな細かいとこ見てないぜ全体を見ろよ、と抱えられるように姿見の前へと体を押しやられた。
恐る恐る目を開けば緑のドレスを身にまとった自身の姿が鏡に映しだされていた。
「清の民族衣装らしい」
全体的に深みがかった色もいいし、生地の肌触りも確かにいい。
胸元に咲いた小花は腰から裾まで、川が流れるようにちりばめられていた。
左右非対称に舞う花びらはなんと優美なことか。
裾にびっしりと施された金糸の刺繍も目を見張る程素晴らしい出来栄えだった。
「とても、素敵、です……」
「だよな。これ見たときに絶対お姫さんに似合うと思ったんだが……当たりだな」
「いえ、私じゃなくて、このドレスが素敵だっていったつもりで」
「何言ってんだ、服なんて着てなんぼだろ。着る人間がいて初めて完成するもんだ」
後ろから肩を引かれくるりと回転させられると、杙梛さんと向い合せに立たされた。
頭の天辺から足の爪先まで這うような視線に居心地の悪さを感じながら、どぎまぎする。

「これは裾直しもいらねぇな……今日付き合ってくれた礼にやるよ」
「え、頂けないですよ!!こんな高価そうな服!!大体、礼って!!お礼にお礼を貰ったらいつまでたっても終わらないです!!」
「いつまでも終わらない関係……響きがいいな、よし、それで行こう」
「杙梛さんっっっ」

咄嗟に杙梛さんを怒鳴り付けると、カリカリと頬を掻きながら詰まらなそうな顔を浮かべた。
「そんなにきーきー喚くなよ。気に入らなかったか?俺は似合うと思ったんだが……」
「そ、そういうわけではないんです!」
「そうか、そんなに気に入らないか。無理して取り繕わなくてもいいんだぜ」
「凄く素敵だと思いますよ!」
「でも着たくは無いんだろう?はぁー……商売人としても、男としても自信がなくなるな、これは絶対にお姫さんが喜んでくれるって確信してたんだが……とんだ見込違いだったぜ」
「きゅぅーーー……」
いつの間にか戻ってきたペリの相槌も余りにも悲しげで。
「お姫さんが着てくれないんじゃ捨てるしかねぇな」
「きゅん……」
「他のお客さんに売られたらいいじゃないですか!」
「俺はこの帝都で一番お姫さんが似合うと確信してる。間違いねぇ。それを他の客に売れるかよ」
「……っっっ」
さっきまでのドレスとは違う、私のためだけのドレス。
スカートの裾をギュッと握りしめる。
「保水性は悪そうだが……切り刻んで雑巾にするか……ペリの寝床にでも敷いて見るか?」
「きゅん……」
そんなことを言われたら、もう是の言葉しかでない。
「……とても気に入りました、頂きます」

そう言った瞬間、しょぼくれた切なそうな二対の瞳がきらりと光った気がした。
「そう言ってくれると信じてたぜ、お姫さん!!あ、このまま着て帰ってもいいからな〜」
「きゅ、きゅ〜〜〜♪」
先程とは打って変わって満面の笑みを浮かべらている二人に愕然とする。
(ぺ、ペリまで……!!さっきまでの顔は演技だったのね……!!)
ペットは飼い主に似るとはいうがどうやらそれは本当らしい。
もうこれは私が諦めるしかないだろう。
それでも、せめてもの抵抗にぼそぼそと言い訳が口をついたのは致し方無いことだと了承して欲しい。

「で、でも、本当にこんな素敵な服を着ていく場所も私には無くて……お礼のお礼のお礼なんてもうどうしたらいいか……」
「ん〜……そうだなぁ、じゃあ……お姫さん今から俺とデートしようぜ」
「で、でぇと!?な、なんでそんな話に」
「俺は美人と出かけれて嬉しい、店の商品の宣伝出来て嬉しい。お姫さんは俺に礼ができた上にその服を着る機会もできて嬉しい」
「一石四鳥だ、それ以上の案があるなら受け入れるぜ?」
杙梛さんは腕を捲り上げながら戸棚の小さな引き出しを開ける。
金色の水鶏の付いた簪をつまみ上げるとにんまりと笑みを浮かべた。



「す、凄く見られている気がします」
「瑰麗の姫君が美男子を連れ添って歩いてるんだ、見るだろ」
「私のことを褒めすぎだし、自分に自信が有りすぎでどう突っ込んでいいやら……困りますっ」
「きゅ、きゅ〜」

結局、そのまま反論できなかった私は杙梛さんの勢いに押され、流された。
終わるまでにどこに行きたいか考えとけよ、と言いながら杙梛さんは私の髪を手早く結いあげると、先ほど取り出した綺麗な細工の簪を飾りつけた。
どこまでも器用な男性だ。モテるだろう。
車道から距離をとるように、引き寄せられた時から、そつなく腰に回された腕を見つめると自分の足元が目に入る。
私の足を包んでいるのも履いたことの無いような柔らかい絹の靴だ。
牡丹の刺繍が入った真っ白な生地はこんな風に外を歩くためのものではないだろう。
この綺麗な靴を汚すから嫌だと言えば、抱き上げて街を練り歩くという。
杙梛さんに話術で勝てるわけもなく、今はこうして並びながら、街を歩いている。
私の意見は通るようで全てが彼の手の内で転がされている気がする。
(本当に強引な人……こんな人今まで私の周りにいたかしら……)
女学校にいた少し強引な先輩やほんの少し我儘なヒタキとも違う、強引で傲慢な人。
それでも、決して嫌な気持ちにはならず、最後に困った人だわ、と許したくなってしまうから不思議だ。
これが人徳というものだろうか。
最終的にはこの靴まで譲り受けることになり、後日杙梛さんの店で外来品の香りのいい石鹸を購入することになってしまった。

「それにしてもどこに行きたいか、って聞いてうまいものが食べたい、と言われるとは思わなかったぜ」
「い、いいじゃないですか!他に思いつかなかったんです!」
「まあ、映画とか言われても俺がお姫さんを堪能できないしな、結果としては上々か」
「映画は男性と一緒に見に行くものではないのでは?席が離れてしまっては一緒に行く意味がないじゃないですか」
「今は男女隣同士の席もあるんだよ」
「え、そうなのですか!?」
随分とこの数年で事情が変わったようだ。
だからさっき通った映画館の周りには男女二人で歩いている人達が多かったんだろうか。
「ああ、恋人同士で行くとこうして手を握りこんで、互いの温度を分け合いながら……顔の熱を相手にばれないように二人してじっと正面のスクリーンを見つめるんだよ」
腰からするりと腕が外されたと思えば手のひらを握りこまれる。
そして正面からじっと瞳を覗きこまれた。
「俺は相手の目を見ながら口説く方が圧倒的に好みだけどな」
いくら慣れていないとはいっても、同じ日に何度も繰り返されるそれに朧気ながらにも耐性はついた……はず。
「そういうのは恋人相手に行ってくださいっ……」
ドキドキする心臓を必死で抑え込みながら、手ぱっと外すと、近寄りすぎた杙梛さんの体をぐいぐいと押しやった。
それと同時にぴょんと飛び出したペリが腕の中に飛び込んでくる。
「きゅわっ!!」
ふわふわとした毛並みが何とも堪らない。
「まあ、映画にいくならペリはお留守番だしな」
「きゅ、きゅー……」
「レストランにいってガッツリ飯を食ってもいいが、ちと時間が早いな。ちょっと裏路地入るが顔見知りがやってるカフェがある。ペリを連れて入っても大丈夫な上に甘味が絶品でな」
「きゅ〜〜〜!」
「和と洋で真逆なんだが、イチゴの入った大福とイチゴのケーキがうまいんだぜ、行くまでにどっち食うか決めとけよ」
「イチゴが大福に……!?どっちも捨てがたいですね……」
「悩むんだったら両方食うか?」
「そんなに食べられません、それにこの服で食べ過ぎたらぽっこりお腹がでちゃいますよ」
「じゃあ、俺が姫さんと別のやつ頼むから、一口ずつ食ってからきめりゃぁいい」
「え、いいんですか!」
「でも、まあお姫さんは細すぎるから、もちっと肉を付けた方がいいと思うけどな」
そっと耳元に寄せられた唇から紡がれる数字の羅列に目を見張る。
その数字は誰にも、告げていないはずだ。女学校の同級生にだってそんな細かな数字は伝えてはいない。
「な、なんでそれを……この服のせいですか!私のスリーサイズ!」
それがこの服を着て歩くことでばれてしまうのだったら、とてもじゃないけれどこの服は着て出歩くことはできない。
ギュッとスカートを握りこむと手の甲をその上からそっと握りこまれた。
「ちげぇよ、寧ろ事前に分かってたからそこまでぴったりなんだって」
「確かにぴったりで吃驚しましたけれど……」
他の服とは違い今身にまとっているこの緑のドレスだけは生地を余すところなくぴったりと体に張り付いたようだった。
てっきり吊るしの品がちょうど良く着れたのだと思っていたけれど偶然ではなかったということだろうか。
(もしかして杙梛さん自身が注文して作らせたものなんじゃ……他のお客さんじゃない、私だけのために)

まるで杙梛さんの着ている服と対のようなこの服を。

「いい男ってのは、好いた女に服を贈れるようにどんな服の上からでも分かるようになってるんだぜ」
「…………」
一瞬、呼吸の仕方を忘れてしまった。
指摘されなくても分かる。顔が、耳が、首が熱い。
(今日一日一緒にいてわかっているじゃない、杙梛さんは軽口をすぐに叩くって……)
必死に自分を叱り付けるが、それでも”好いた女”どうしてもそれが頭から離れない。
覚えているわけじゃない、それでもずっと待っていた、そうも思える、不思議な感覚。
朧げで確信なんて全くできていないのに、抜けている記憶ピースがカチリと嵌った気がした。
「き”ゅっ」
思わず腕に力が入ったのか、腕の中でペリが苦しそうに鳴いた。
「あ、ごめんなさい、ペリ」
腕を緩めると、顔を隠すようにペリの背中へと埋めた。
暖かで柔らかな毛が唇に触れる。
これも覚えている、覚えている感覚だ。でも、きっと違う。
もっと、熱く激しいものだったと私の唇が、心が言っている。
「……女の勘を信じるべき、よね」



「おいおい、そんなにじっと見つめられると俺に穴が開いちまうぜ」
「あ、ごめんなさい、不躾でした」
カフェーについてから、向かいに座る杙梛さんの唇をじっと見つめてしまう。
(本当にこの人が私の……?)
今日半日一緒に過ごしただけで、相手のことを全て分かったとは言えない。簡単に言えるほど夢見る乙女ではいないはずだ。
(それでも、この人の温かさを私は知っている)
試してみたい、もっと激しい熱い温度をこの人と共有していたのか。
この人が私にとってどんな人だったのか。
「口に合わなかったか?」
「いいえ、いいえ、とても美味しいです。こんな裏路地になければもっと繁盛していたのに」
「それはよかった。まあ、この店のことは言ってやるな。店主が繁盛して人が来ることを忌避してるんだ、なんともならねぇよ」
杙梛さんの知り合いだという、無口な店主さんは杙梛さんとは真逆の寡黙な人見知りだという。
買い付けに行った他国で出会った店主とこの帝都でまた会うことになろうとは思って見なかった、と杙梛さんが笑う。
甘味とコーヒーを出した後、奥にこもって出てこなくなってしまった。
動物には心を許しているそうで、その後を追って駆けていったペリには奥でおやつをふんだんに振るまって貰えるらしい。
慌てて後を追おうとすれば、杙梛さんに呼び止められ卓上のベルを指し示された。
卓上にあるくすんだ色のベルを鳴らせば、ご主人もペリも、すぐ戻ってくるらしい。
甘味の味は、杙梛さんの言っていた通り絶品、イチゴ大福もイチゴケーキも頬が蕩けるほど美味しい。
また、機会があればすぐにここにきてしまいそうだ。
「ほっぺに、生クリームついてるぜ、お姫さん」
すっと頬を掠めるように撫でた指には白いクリームがべっとりとついていた。
こちらを見てにやりと笑う、杙梛さんはそのままそれを唇へと運ぶ。
「ごっそーさん」
(違う、そうじゃない)
何とも言えない違和感が心を覆う。
”いつも”と違う。
「……頬を直接舐めないのですか?一緒に唇を奪ったりも?」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔、とはこういった顔をいうのだろう。
素っ頓狂な顔をして、杙梛さんが固まった。
「ふふふ、杙梛さんのそんな顔初めて見ました」
果たして記憶を失う前の私もこの顔を見たことがあるのかないのか。
ないのであれば非常に珍しいものを見てしまった。役得だ。
「……っ冗談がうまくなったじゃねぇか。深窓の令嬢が急に男を誘惑してくるんだ。驚きもするだろうよ」
「記憶を失う前の私はそんなことは言わなかったですか?」
「言ってくれたら嬉しいけどな」
明言しないこの人は、懐から煙管を出して唇に食む。
「ねぇ、杙梛さん煙草はやめましょう。折角今なら甘い口付になるのに、苦くなってしまうわ」
〜カンカンカン〜
杙梛さんの大きな手のひらから滑り落ちた煙管が狭い店内を転がる。
「姫さん、冗談でも言っていいことと悪いことがあるっていうのは覚えといた方がいいぜ、もうちっと相構えて言葉を発した方がいい」
「それを杙梛さんが言うんですか?普段から冗談ばかりなのに?」
「俺はいいんだよ、勘違いされても役得で終わりだからな。お姫さんは違うだろ。世間知らずなのは可愛いがそれで泣くはめになったら事だぞ」
「自分で決めたことなら泣きません。……それに私は冗談なんて言ってるつもりはないです」
「……何か思い出したのか?」
「思い出してないです、でも思い出したいの」
杙梛さんのほんの少しだけ緊迫した顔とは反比例して私は頬を緩めた。
また見てしまった珍しい彼の顔をまじまじと見ながら言葉を紡ぐ。
「杙梛さんに口づけして欲しいんです。大事な何かを思い出せる気がするの」
「……お姫さんが何を誤解しているのかはしらねぇが、俺とお姫さんは恋人同士といえる関係ではなかったぜ?……俺が一方的にあんたを手篭めにする関係だ。記憶がない時においたをしたバカ娘なんて、後で泣いても慰めてなんてやらねぇぞ」
「後悔なんてしない、今日一日……いえ、半日一緒にいてわかったんです」
あまねく出会いの中で貴方との邂逅は一等大切なものだと知っている。
それがどうしてなのか。
「私は貴方が好きだわ」
「……!!」
「きっとそれは記憶があった私だって同じよ」
「……」
「私を拒絶しないで。私の唇を奪って」
身を乗り出して言い募る私をじっと見つめると杙梛さんは諦めたように笑った。
「わざわざ記憶をなくしたときまで同じ轍を踏むとは本当に物好きなお姫さんだ」
席を立つと一歩踏み出し私の席の横に立つ。
咄嗟に身を引くと今度は楽しげに笑った。
「おいおい、さっきまでの威勢はどこにいったよ」
「威勢だなんて……」
「お姫さんが悪いんだぜ?このまま忘れているようなら、見逃してやったのに。悪い獣に喰われない未来もあったっていう話だな。昔も今も言うけどな、あんまり俺みたいな男の傍にいるっていうのはいい事じゃない」
「……その悪い獣が杙梛さんだというなら食べられても啜られてもいい、そう思ってはダメですか」
「はっ!その言葉忘れるなよ?」


そういうや否や、顎を引かれると、目を閉じる間もなく唇が塞がれた。二人の吐息が混ざり合う。
暖かいそう思う暇もなく、荒々しく唇を貪られる。
椅子に縫い付けられるように肩を押さえつけられて身動きが取れない。
息を吸おうと軽く開いた唇の隙間から熱い熱が割り込んで、口内を幾度となく犯していく。
そうだ、私が求めていたのはこの熱だ。
歓喜のせいか、はたまた酸欠のせいか。目じりからぼろりと滴が零れ落ちる。
性急な口づけが中断され、唇でそれを拭われる。
滴の意味を勘違いしたのか、耳元で杙梛さんが呟いた。
「ツグミ、もう、お前が何を捨てることになっても……逃がしてやらねぇ」
(……逃げるなんてありえない)
彼の腕という鳥籠の心地よさを知ってしまったのだから。
もう、鳥籠の扉をあけられても私は飛び立つことはできない。



「んっ……っ……ん!?ん〜〜〜!?」
目元に、唇に暖かな温度を感じて微睡んでいたかと思えば、急に唇を塞がれ飛び起きる。
いや、飛び起きようとしたが、それを留められた。
ガッチリと抱え込まれた体は布団に縫い留められて微動だにできなかった。
寝ぼけてぼんやりする頭で性急に求められる口づけに必死に答えた。
「っっっ、はぁ……っ……」
彼が唇を離すと、激しい口付けを思わせる様な銀糸が朝日に照らされてきらりと光った。
「っおはようございます!杙梛さん!」
「おはようさん」
「朝からやめてくださいよっ、苦しくて倒れてしまいそうですっ!」
「安心して倒れてくれていいぜ〜。俺が看病してやるよ。……手取り、足取りな」
もうっと軽くおでこを押しやれば安心したように彼が笑った。

ほっと、一息ついて周りを見渡せば、ここは杙梛さんのお店の奥座敷だった。
夢と現実で共通するのは激しい口づけだけ。
服装も場所も時間さえも違う。
(さっきまでのは夢だったの?)
それにしては現実的な、不思議な夢だった。

「悪い夢でも見たか?」
「え?」
「目元に涙が滲んでた」
涙のあとなのか、舐められた後なのか目元がスースーと冷たい。
「悪い夢なんかじゃないです。私が貴方に惚れ直す夢だったの」
「……それはまた、お姫さんは質の悪い悪夢を見られていたようで」
「悪い良いかは決めるのは私だわ。実はね、始めに脚立から落ちて記憶をなくす夢を見たの」
自分から迫った、なんて都合の悪い話は除いて、夢の話を掻い摘んで話す。
ふと見上げると、にやにや笑っていた彼が次第に神妙な顔になっていた。
「どうかしましたか?」
「いや、正夢ってのもあるかもしれねぇな。杞憂ですみゃあいいが……店の脚立は一旦しまっておく。仮に店先に出てても使うなよ?」
「まさか。それに私が脚立から落ちたのはここじゃないですよ」
「用心に越したことはないだろ。お姫さんがアウラが見える以外にも新しい能力に目覚めたななんて話信じられないけどな。……ちぃーと待ってろよ?」

私を布団に押しとどめつつ立ち上がると、杙梛さんは直ぐ様茶色の古ぼけた箱を持って戻ってきた。
「え、これ……まさか……」
恐る恐る開けた箱の中からは見覚えのある緑のドレスが出てきた。
先ほどまで私が夢の中で纏っていたドレスと同じものにしか見えない。
「手触りも、柄も一緒だわ……」
「奇妙なこともあるもんだな」
「もしかして金色の簪や絹の靴もあったりしますか?」
「……ある」
珍しく唇を尖らせて、ぽつりと呟く彼に問いかけた。
「どうかしましたか?ご機嫌斜めに見えます」
「……俺は自分がこんなに狭量な男だとは思っていなかったんだが」
「はい?」
「ちょっとだけ夢の中の俺に嫉妬してるな。これ見せて喜ぶお前の顔がみたかったんだが……。てめぇに先を越されるとか洒落にならねぇな」
「え」
予想外の言葉に驚愕してしまう。
(いつも妬くのは私だけだと思ってた……)
フクロウの皆といても、仕事中本屋を回っていてもそんな素振りを見せられたことなどただの一度もない。
質の悪い男性に絡まれていたときに助けてくれたときですらそんな余裕の無い顔にはお目にかかれなかった。
「杙梛さんも妬いたりするんですか!?」
「お前は俺を何だと思ってるんだよ。……普段はまあ、これでもいい年した大人だからな、紫鶴やガキには妬やかねぇよ」
「……妬いてくれたっていいのに」
「フクロウの野郎どもにお前を泣かせる度胸はないのは知ってるからな。でも、俺はお前が泣こうがもう手を出すことに躊躇わない。それは夢の中の俺でも一緒だろ」

軽く唇を食んだ彼の口づけはゆっくりと下がり鎖骨へ、胸元へと降りていく。
既に肌蹴ていたシャツを大きく左右に寛げると胸元に吸い付き小さな赤い跡をいくつもつけて回った。
「っっっ」
「夢の中の俺に跡付けられてないか調べてやるよ……体中隅々とな」
「さ、されていませんよ!夢では杙梛さんとそんなことしてません!」
「おいおい、お姫さんを目の前にして手を出してない?もう、それは俺じゃないだろ?」
この真っ白な肌を見ながら手を出さないなんてありえねぇな、と呟きながら、胸に腹に口づけを落とす。
起きたばかりだというのに、なんと自堕落なことだろうか。
それでも、それを拒めない。喉を詰まらせた私の身体がビクビクと痙攣する。
「記憶をなくしてっ……、戸惑っていた私に、非常に紳士で、優しかったんですよっ!そのっ……最後に口づけは、されましたけど」
「紳士ねぇ……お姫さんは未だに俺のことを善意的に見すぎなんじゃないか。自分でいうのも何だが俺は相当性質の悪い男だと思うけどな。……まぁ、いいか。一生誤解したままでいいぜ」
臍に吸い付いたかと思えば今度は持ち上げた太ももの内側に。
太腿を辿った指先が下着の裾を掠めながら、足の付け根に触れる。
「くぅ……っ、ん」
彼の与える熱にたまらずそっと彼の頭に腕を回した。

「きゅ、きゅ〜」
襖越しに可愛らしい鳴き声が聞こえて二人の動きが止まる。
でも、ここではもう止められない。私だって、止めたくないのだ。
甘い吐息を一つ落とし呼吸を整えると、ゆっくりと懇願した。
「っ……ペリ、ごめんね。30分だけお店で遊んでてくれる?」
「ペリ、昼過ぎまで遊んでていいぞ、カウンターの下の戸棚におやつも入ってるから食ってもいい」
「きゅ!きゅ〜〜〜!」
了解の意を示したペリはたたたっと足音を立てながら遠ざかっていた。
杙梛さんに言われたおやつを探しにいったのだろう。
ニヤリと私を見下ろす自信家で少し意地悪な彼。そして、私の愛しい人。
彼の瞳を見つめるだけで体の奥が甘く疼いた。
私が貴方を誤解しているというなら一生誤解したままでいい。
ずっと、隣に私を置いて離さないで。

「愛してる」

そう、呟いたのは私か彼か。
快楽に浸って愚図々々になった私の頭では判断できない。
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